_SL500_AA300_レッキング・ボール 。ブルース・スプリングスティーンの今年3月に出た新譜だ。何故か日本ではあまり話題にならなかったが世界14カ国で1位を獲得するなどヒット。その根強い人気に驚かせる。

このアルバムはリーマン・ショックなどの世界的不況で家や職を奪う社会を怒りを込めて歌い上げていている。彼は言う。「これは俺がこれまで作った中でも最も直接的なレコード。長い間、誰も説明責任を負おうとしていない。みんなが家を失いそうになっているというのに、誰もそのことで咎められていない。ウォール街占拠が起きるまでは、アメリカの最も大切な部分、アメリカの歴史や共同体の感覚を攻撃するような盗人行為に対して、誰も抵抗していなかった。俺の音楽は…アメリカの現実とアメリカン・ドリームの間の距離を見定めようとするものなんだ。『レッキング・ボール』が意味するのは、この30年の間にぺしゃんこに潰されたアメリカの理想や価値観だ」 。う〜ん、なにやら政治的なメッセージが強いぞ。
予想通り、こうした作風や政治的な意見をトーンダウンさせようとする勢力から「エセ愛国者」という喧伝がされてしまった。だが脅しやプレッシャーに屈せず、たじろぎもしないとブルース・スプリングスティーン。流石は「ボス」と呼ばれるだけの事はある。 カッコいいぞ。

ここ数年は僕はスプリングスティーンは殆ど聞いた事がなく、『明日なき暴走』『ボーン・イン・ザ・U.S.A』の過去の人と思っていたのだが、このアルバムには少なからず衝撃を受け、相変わらずの力強いメッセージとフォークロックサウンドに感動した。本物はぶれないもんだねえ。 ところで、『ボーン・イン・ザ・U.S.A』の印象があまりにも強いためマッチョな愛国者と思っていたら、スプリングスティーンは熱心な民主党支持者だそうだ。イメージとの大きな乖離。皮肉なもんだ。

そんな事はともかくとして、サウンド的には大らかで乾いていて、アメリカの田舎道やハイウェイでかかっているのが、やっぱり一番合うような音だね。明日の朝は薄いアメリカンコーヒーでも煎れて、このアルバムをまた聞こっと。